こえのたね
運営者について
小さい頃から医師になることを夢見ていました。祖母が病気を患ったことや、身近に医療に携わる親戚がいたことも影響していたと思います。
その想いが強くなったのは、中学2年のときです。若年性関節リウマチで半年間入院することになりました。不安な入院生活の中、担当してくださった医師が、いつも親身に声をかけてくださったことが、深く心に残っています。「自分もこんなふうに、人の力になれる仕事がしたい」——そう強く思うようになりました。
夢の形を変えて見つけた、言語聴覚士という道
退院後、自力で勉強を続けて高校に進学したものの、基礎からのやり直しで大学受験には3年の浪人を経験し、結局、大学受験には失敗しました。医療に携わりたいと思ったとき、親に学費の負担をかけたくないという思いから国立大学を目指していただけに、叶わなかったことはとても悔しく、辛い経験でした。
悩んでいた時期、母から「医者にこだわらなくてもいいんじゃない?医療って広く考えてごらん」と言われたことが、視野を広げるきっかけになりました。医師との温かいやり取りが忘れられなかった私は、病気やけがによってコミュニケーションが難しくなった方の力になりたいと考えるようになり、言語聴覚士の専門学校に進学しました。
専門学校時代、実習先で出会った患者さんに「頑張って言語聴覚士になってね」と声をかけていただいたことは、今も忘れられません。しかし本番に弱い性格もあり、国家試験にも一度で合格することができず、2年間の国家試験浪人を経験しました。苦しい時期でしたが、当時のスーパーバイザーから「現場で待ってます」と言っていただいた言葉に何度も支えられました。それでも諦めずに歩み続け、国家資格取得後は、働きながら通信制大学にも通い、卒業しています。
この仕事を選んでよかったと思う瞬間
臨床の現場に出てから、忘れられない瞬間がいくつもあります。
失語症で重い症状を抱えていた方が、ご家族の名前を初めて呼ぶことができた瞬間に立ち会えたこと。胃瘻で食事が難しいと言われていた方が、評価とリハビリを重ね、病棟のスタッフとも連携しながら、最終的にはご自身の力で3食を食べられるようになったこと。
こうした瞬間に立ち会うたびに、この仕事を選んでよかったと、心から思います。
現在の活動と、後進への想い
国家資格取得後は、大学病院や療養型病院、通所リハビリなど、さまざまな現場で臨床経験を積みました。現在はフリーランスの言語聴覚士として、児童発達支援センターや放課後等デイサービスでの勤務、ご自宅への訪問リハビリやオンラインでの言語リハビリ、市の介護予防事業での健康体操講師など、幅広い形で活動しています。
また、後進の育成にも力を入れています。新人だった頃、「何を勉強すればいいのか」「自分に何が足りないのか」と、一人で悩んでいた時期がありました。今の後輩たちには同じ思いをしてほしくない、そして、なりたいと思って選んだ言語聴覚士という仕事を、途中で諦めてほしくない——そんな想いで、新人STの方への指導も行っています。
これから大切にしたいこと
支援の現場では、行政の制度上、どうしても「小児は小児」「成人は成人」と分けて関わることが多くあります。けれど私は、出会った方を一人の人として、ライフステージに合わせて長く見ていきたいと思っています。小さなお子さんも、ご高齢の方も、同じように大切な一人の人生を歩んでいます。その時々に寄り添うことで、当事者の方だけでなく、ご家族のことも支えられる存在でありたいと考えています。
「こえのたね」を通じて実現したいのは、当事者・ご家族・専門職、それぞれの立場からの情報や想いが行き交い、支援を必要とする方と、支援を届けたい方がつながっていく場所をつくることです。